TNデザイン一級建築設計事務所

建築士と建築家

最近よく仕事をして頂く業者さんの自宅です。 設計自体は関わっていませんが、私の仕事からヒントを得た(とご本人が仰る)部分が 多々見られます。一度設計について私の持論をお話しした事もありまして、それに賛同していただいた事もありますので私が見ても参考になるものが沢山ありました。ただそこで感じた事は設計者の不在が気になりました。 その方(施主)は設計者ではないので、結果として装飾的に建築をコントロールすることになります。それは逆説的に施主のセンスの良さを引き出している事になるのですが 本来は設計者がコントロールすべき所を施主がしてしまっているということです。 一般的には建築士(あえて士をつけます)は骨組み所謂構造を担当するものという認識が多くありますがそれは本質ではありません。 さらに建築士というのであれば二級と一級の区別がありそれぞれ担当能力に違いがあります。単純に一級が良くて二級が駄目という事ではありません。 では建築家とはどういう存在か。 少なくとも建築士の資格のない人は建築家ではないと私は思います。その建築士のなかでも優れた建築をつくる人が初めて建築家と呼ばれるべきですが、現在はその境界線は曖昧です。でも建築士=建築家ではないし、設計を良く知っている素人=建築家でもないと思います。…

TNデザイン一級建築設計事務所

図面

ある改修の仕事でお借りしている図面。 この建築は築36年でこの図面も世に生み出されて36才から37才くらいになるという事ですね。 それでもキチンと残っているのは、やはりクライアントに愛されている証拠だと思います。 手書き図面でこの緻密さは、当時でも大変な労力だっただろうなと想像してしまいます。 私の世代はちょうど手書きからCAD図への転換時期で手書きの図面も昔は書いていました。 当時は手書きでないと図面じゃないという雰囲気がありましたし 建築の質が変わるから手書きにこだわっている人もいました。 今はほとんどがCADによる図面がほとんどですが、建築の質は変わったのでしょうか。 多分ツールの違いは建築の本質には関係ないと思います。 手書きであろうがCAD図であろうが、本物は独特のオーラを持っています。 それは素人が見ても分からない領域かも知れません。 でも、コンピュータがなければ設計する事自体が困難であろう建築が現在の世界のトレンドである事は間違いないと思います。…

TNデザイン一級建築設計事務所

chair_3

chairの第3弾です。 もう定番のイームズですね。アームシェルのロッキングタイプです。RARと呼ばれています。 上の写真は作品の中に持ち込んだものです。実はこれはレプリカです。 新品のものもヴィトラが復刻していますが質感がきれいすぎるので、もう少しヤレているのがいいなと思ってました。 数年前はブームすぎて、手が出なかったのですが自宅用に一脚欲しいなと。 質感がファイバーっぽいものを見つけて、早速購入。レプリカのくせに割と高い。 撮影用で使い倒してるんですけどこれが思った以上に快適です。 座面が広く椅子の上であぐらをかいたり膝をたたんでみたりするくらい余裕があるので色々な座り方が可能です。 ただし体格にもよります。私にはあっていました。 しかもロッキングタイプなので、読書にはもってこいです。 私の指定席になりつつありますが、娘もなかなか気に入っているらしく 気がつくと足をプラプラさせながら楽しそうに座っていたりします。最初のうちは取合いでケンカしたりしましたが、(大人げない・・・) 今では一緒に座ったりもしてます。 でも、イームズの良さは何気ない雰囲気というか気取らない感じがいいですね。…

TNデザイン一級建築設計事務所

パッケージ

またまた雑誌ネタですが、このカザベラは届いていたのですが、なぜかこの景気の良さそうな数字の号だけ未開封のまま、数ヶ月放ったらかしでした。つい先日、そろそろ読もうと思い立って開封したら・・・ なんと光沢だけで文字が表記してあって、全て漂白されているスーパーミニマムスタイル! これにはちょっとびっくりしました。 日本の雑誌のコンセプトだとしたら、まず却下されそうなデザインです。分かりにくいからか、japan化される過程で白黒の表紙が別で同封された模様です。 このモノクロ板の表紙は全く必要としないと思うのは私だけでしょうか。 カザベラは本国イタリアではとても歴史のある崇高な建築雑誌であります。 それだけに広告を見るだけでもなかなか面白かったりします。 最近のカザベラは表紙はほとんど数字のデザインのみで写真は載っていません。 3桁の数字が歴史の重みを表現しているのみです。 こういった雑誌のありかたも日本の情報過多のデザインと一線を画すものです。 表紙によって売れ方が変わるのかもしれませんが、そんな目先の事ではなく 一貫したジャーナリズムの姿勢が評価される、そんな成熟した社会に日本は到達する事が出来るのでしょうか。…

長野のデザイン住宅設計事務所

GA_japan

建築雑誌の「GA」も100号に到達しました。正確にはとっくに101号も出ているのですが 現場が忙しくて、ほとんど”見た”だけで終わっていたので、遅ればせながら熟読しました。 さすがに読み応えがありますので、ご興味のある方は是非一読してみて下さい。 私の場合、建築をつくることを志してまもなく創刊され、当初からその美しい写真と裏にある膨大な知識に圧倒され続けていました。 他誌と比較すると、明らかにその編集方法は違います。 明確な個人の意志を感じるし、それと同時に建築に対する愛情を感じます。 そして、日本はこれから世界水準の建築をつくらなければならないし、それをつくれる土壌がある事も知りました。 しかし、それに日本人自体が気づいている人が少なすぎるのが私の印象です。 東京から移ったときにそれは特に感じました。 建築に対する評価は、公共建築だけでなく個人住宅であっても町並みを形作る重要な存在です。 そのデザインに対して施主が満足すればいい、あるいは満足していないから駄目ということだけで判断は出来ません。 建築はそれが個人の資金で建てられたものであっても、広く社会的な評価が得られないとするならばそれは単なる大きなゴミに匹敵するものです。 だからこそ、施主になるならばどう振る舞うかという”施主道…

TNデザイン一級建築設計事務所

ゆか

事務所の床を張替えました。ウチの定番になりつつあるオークです。 今回は大工さんに貼ってもらいました。 こちらも定番のオスモです。 オスモは塗装の技術をそれほど要しないので、素人でも簡単に塗れますのでおすすめです。 ただし、クオリティを求めればそれなりに工夫が必要です。 どんな作業も研究無しには良くなりません。 塗料の無駄や手間を考える事も重要ですが、最終的な仕上りがどうなるかは その手間に左右されたりするので、探究心は不可欠です。 しかし、建築工事はさまざまな職種が必要でその職人レベルも様々です。 ある程度設計側でそれをコントロールすることも可能ですが、根本的にダメな職人は不可能な場合もあります。 良い現場は不思議と良い職人が集まることがあります。 現場も生き物ということでしょうか。 さて、塗装の話に戻りますが、やはり少し乾燥時間を入れるのと 極力薄くのばして塗るのがいいようです。 職人さんによっては拭き取りが早過ぎる場合が多いので、これは要注意です。 色見も実作との違いが確認できました。 無垢材は使い込んでいくうちにどんどん風合いが変化していきますので そういう”不均質さ”も建築には必要な要素だと思います。 そして、その変化の仕方は使う人のセンスによって良くも悪くもなっ…

TNデザイン一級建築設計事務所

スタディーズ・イン・オーガニック

隈研吾建築都市設計事務所著『studies in organic』 著者が設計事務所になっているのがちょっと変わっていて、値段も手頃だったので読んでみました。 隈さんの建築は以前から好きでよく感動させられました。 広重なんかは近くに行くときは必ず寄らせてもらってます。 最近はご自身も語るように新たなフェーズに向かっていることを私も感じていて、それから「隈作品」からちょっと距離をとるようになりました。 そんな状況だったので、今の隈さんはどんな事を語っているのだろうかと興味がありました。 巻頭の論文は私にとってはとても意味のあるものになりました。 それは、私自身が悩み苦しみながら格闘している様子と共通するものを見つけられたからでもあります。 私のフェーズは相変わらずに小さな「リング」でしかないけれど、それに対応する戦い方も考えなければならないなぁと再認識するとともに、フェーズを進化させていく努力もしなければならないと感じました。 それが、隈さんのように華やかなものにならなくとも。 設計事務所として書いているというのが、もしかしたらそういう意味なのかもしれません。…

TNデザイン一級建築設計事務所

くるま

先日、引渡を終えたのですがその直前に車が路上で故障しました。 現場が始まるとロクにメンテもしなくなってしまうので、当然と言えば当然ですが 実はこの現場が始まる直前にも同じような故障をしています。 現場の始まりと終わりを車の故障で感知しているかのよう。 不思議ですな。 上の写真は空冷ワーゲンをご存知ならば見た事あるでしょうが、ミッションです。 故障の原因はクラッチレリーズが折れてしまったのです。写真中央の丸いパーツを支えているバーです。 ちなみにこの写真は直った後の写真です。 路上で止まったのは初めてだったのですが、打合せ予定の家具屋さんと 急遽来て頂いた車屋さんに救助して頂きました。感謝いたします。 当初はクラッチケーブルを疑っていたのですが、これが全く異常なし。 もしやと思い、エンジンを下ろしました。 レリーズはアーリータイプだと折れやすくジャダーが出やすいので レイトタイプに変更した方が幸せになれます。とパーツショップの方に教えて頂きましたので 早速、レイトタイプに変更大作戦を計画しパーツ注文しました。 でもおろすんだったらってことで、クラッチ交換とエンジンシールの交換とオイルも換えなくちゃ・・・って感じで作業は増えていき・・・。 パーツ待ちを合わせると約1週間かかりました。 で…

TNデザイン一級建築設計事務所

住宅の意味

  Photo:P1060316.jpg by End User 最近、住宅をつくることにちょっと迷いが出てきました。 そして、アートを提供するべきという自分の信念にも。 このブログは自分との対話をテーマにしているので、出来るだけ自分の思うことを書きたいと思います。 それは、クライアントの満足度に対する疑問です。 建築は公共的なものでその評価は客観的であると僕は思っています。 でも、客観的にいくら評価を得てもクライアントの満足度はそれほど比例しない場合があります。 例えばご夫婦であれば、旦那様と奥様の温度差の違い。 夫婦であるから同じ感覚であるという訳ではなく、違いがあって当然。 だからこそ、計画段階での打ち合わせや図面の確認で、そのギャップを埋めていく訳です。 でももしも埋まらなかったら? 埋まらずに建築が完成してしまったら? 僕は建築には愛が必要だと以前の記事に書きました。 それはクライアントの愛が一番必要なのは言うまでもありません。 きれいなだけでは愛されない。 人を好きになることに理由は必要ないように住宅を愛することに理由はない。 気に入ることが最大の理由であれば、気に入らないものに愛情は生まれない。 ではどう気に入ってもらえるか考えなければならないが、僕はクライア…

長野のデザイン住宅設計事務所

オープンハウス

オープンハウスが無事に終了致しました。ご来場の方には心より感謝致します。ありがとうございました。 そして、クライアント様のご好意にも感謝しております。 当日は、以前お世話になったクライアント様もかけつけてくださいました。 特に「#5115」のクライアント様は終了時間を過ぎても話が尽きなくて、そのまま場所を変えて話し続けました。 お会いするのも久しぶりで、実は今年の夏のあたりからお会いしようとお互いにスケジュール調整をしていたのですが、この現場の都合もあったりしてなかなか時間が取れなかったのです。 いつも時間を忘れて話し続けてしまうのですが、あらためて感じる事はこの方の建築に対する”愛情”といいますか、自分の住宅に対する愛をひしひしと感じるのです。 それは、私にとってとても嬉しい事で感動してしまいます。 その方の言葉の端々に自分の家の感覚が体にしみ込んでいるという感覚を感じます。 そしてそれは、かなりのハイレベルな感覚に成長しているように思えるのです。 建築家の感覚に近くなる程に。 だから、建築評論家のような事をさらっと言ったりします。 「それは、小澤さんに教えられたことですよ」 そう言われたとき、私の思いが建築を通して伝わっているのだなと実感します。 建築を理解する事はとても時間のか…

TNデザイン一級建築設計事務所

GD2009表彰式

Good Design Award 2009の表彰式に出席いたしました。 戸建部門の全受賞者です。 私の作品はどこかわかりますか? 前回の表彰式と少しずつ変化していて、楽しかったです。 改めて見ると、よくぞこの中に選ばれたもんだと感慨深い思いでした。 生意気にも二度目の受賞なのですが、やはり嬉しいですね。 今回は全く自信がなかったので、自分でも驚いています。 しかしこれは一つの評価であって、まだまだやれる事があるし 事実そういう評価を審査員の方から指摘されています。 裏を返せば、とても誠実に審査をしていると言えるでしょう。 Gマークはとても認知度が高くなるにつれて、レベルもアップしているでしょうから 私自身、気を引き締めて新たなる目標に向けて努力したいと思います。 今回の表彰では、審査員の方から直接賞状をいただけると聞いて待っていました。 いざ、私の順番になり、壇上にあがり一礼。 審査員の方「受賞おめでとうございます。作品名ア・ハウス」 私「・・・ありがとうございます・・・(確かにそうだけど、エー・ハウスと言ってもらいたかった・・・)」 まぁよくある事です。 でも、本当にとれて良かった! クライアント様、関係各所の皆様、心より感謝致します。 ちなみに大賞は私の故郷北海道の「岩見沢駅舎…

TNデザイン一級建築設計事務所

空間の質

前回紹介した岸氏の著書の中で、美術館に対する思考があります。岸氏は以前より、F・ゲーリィによる『ビルバオ・グッゲンハイム』を高く評価していたのを知っていたのですが、なにがどう良いのかを再認識しました。 さらにそこにある空間の質と私が何を求めて建築をつくっているのかという本質的な問題を認識する事になりました。 私にとって美術館というものはあらゆるビルディングタイプの中でも特別な存在で、設計者なら美術館の設計を依頼されて喜ばない人はいないでしょう。 そして、私のつくる住宅を見た一般的な意見として、よく言われるのが「店舗のようだ」という言葉について。 今まではさほど気にしていなかったのですが、それは空間の質によるものなのか?ということです。 岸氏によると、テーマパークというのは現実空間から仮想空間に巧みに導入するために、中間領域として商業空間を挟み込む。そこで観客は気がつかないうちに本格的な仮想空間に導入される。それがテーマパークに共通する空間構成である。 そしてそれが、「気がつかないうちに」成立するのは、商業空間は現実の空間のなかでも無意識に半仮想的な空間だというコンセンサスも存在するからだと思う。 そうなると、私の建築空間に対する一般人の評価である「商業空間のよう」というものは、ある種…