Category Archives: 建築デザイン思考

TNデザイン一級建築設計事務所

green_green_green

  Photo:nature revisited By S C Hargis Photography 地球環境についての関心が高まるにつれて、自然だとか緑だとかにも関心が集まっていると思います。 しかし、依然として街路樹はどの地域でも厄介者扱いされているそうです。 そういう扱いをしている人はその街路樹沿いに住んでいる人達だけみたいですけど。 僕は札幌で生まれましたが、当時は札幌オリンピックを終えたばかりで周りはどんどん家が建っていって、新しい住宅街や団地が広がっている風景でした。 今では190万人で全国の市の中で4番目だそうです。 僕がいた頃はたしか130万くらいでした。 よく北海道生まれですというと、「北の国から」のイメージが強いらしく、のどかな田舎で育ったんですねと勝手にイメージされます。 確かに、都心部を離れると延々と牧場が広がる”おなじみの風景”があるのは知っていますが、子供の頃にそういうところに足を踏み入れたことがありませんでした。大学生になって帰省したときに初めて行ったところもたくさんあります。 数年前、町田市に住んでいましたが、風景が小さい頃の記憶によく似ていました。 現在はまた違っているかもしれませんが。 そんな所で育ったわけですので、身近な緑といえば公園の…

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material!

  Photo:Caught in the Vortex By Steve Corey, O.O.T. 建築にとっての素材は、ひとつの大きなテーマに成り得るほどの特徴だと言えると思います。 グラフィカルな意味でのデザイン、例えばCGの世界でも素材感というのは重要なテーマかもしれません。 しかし、建築にとってはこの世に生まれるための構成要素として欠かせないものなのです。 つまり、素材なくして建築なし。 さて、建築を抽象化することは近代建築のある方向性として今も重要なテーマとしてあると思います。伊東豊雄さんは既にその路線からは離脱したと語っていますが。 モダニズム(古典的?)としても抽象化はベースになる思考だと思いますが そこで問題になるのは人間の為に構築された建築があまりに抽象的であるが故に、人間さえも不純物として認識されてしまうことがあるということです。 人間自身を漂白することは、とても難しいことです。 人間は本来自然の一部として存在するのですから。 人間は他の自然と違うのは、脳を持っているということです。 人間の脳は、とても抽象的な存在だと言えます。 そして、その脳の世界を現実化しようとする行為は、人間にとっては必然のような気もします。 でも脳の世界が抽象的だとしても、そ…

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環境

環境について思うこと。 いろいろな環境問題の本を読んだりしてみたが どうも地球温暖化問題は政治的な道具に利用されている感がある。 二酸化炭素が環境に対して元凶であるという論調は既に市民権を得ている。 二酸化炭素が地球を温暖化させている→人為的に気候を変えてしまった。 こういう事に罪悪感を感じたりすることは当然かも知れない。 しかし、それが真実であればの話だ。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によって出されているデータは根拠のないもののようだし、未来の気候を予測する技術自体相当怪しい。 だいたい、明日の天気すら100%で当てることが出来ないのに100年後の気候を予想出来るのか。 本当に二酸化炭素だけが地球環境を左右する悪玉なのか。 数年前は、フロンガスのオゾン層破壊に関して規制がいろいろされていた。 しかし、現在はオゾンはフロンによって破壊される訳ではないことが分かってきている。 だが、そんな事とは別の次元で既にフロンは回収されてほとんどが代替えフロンによる新たな機械に変化した。 フロンが悪玉であるかの検証は後回しにとりあえずほとんどの設備が代替えフロンにすり変わった。 今となっては、その(経済)活動自体が意味のある事だったのか曖昧。 でも活動した事実だけは残っている。 熱力学…

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建築の存在

建築が他のデザインされたものと異なる事。 それは、人間よりも巨大であるということ。 さらに、人間が中に入って活動するということ。 F・O・ゲーリーは現代美術の人でしたが、いまや建築界の巨匠です。 そのゲーリーによれば、建築と彫刻の違いは「窓があること」。 つまり中に人が入るということである。 東京はとてつもない量の人工物で覆われているために外部でさえも内部のように見えてくる。 つまり、全てインテリアの世界。 インテリアだから、模様替えもしたくなるので、建て替えしたくなる。 それが、カオスと呼ばれる東京たる所以だと思う。 東京にいた方が多分仕事はたくさん有るだろう。そういう模様替えが頻発するから。 でも、建築はインテリアとは違う役割を持っていると私は思う。 建築には外観(ここでいう外観はインテリアの反対語としてというよりも外部の佇まいという意味)があって、街並みがあって環境になる。 そして、壊されないで残っていく事が重要だと思う。 現代は建築デザインでさえも消費してしまうほど、情報が溢れている。 しかし、人間が中に入るという性質上、建築は物質からは逃れられない。 その物質性が建築の唯一の武器でもあり、弱点でもある。 CGが真新しかったころ、この物質性が建築をスポイルしているという議論が…

長野のデザイン住宅設計事務所

錯乱

レム・コールハースの「錯乱のニューヨーク」。 金がなかったので、ハードカバーの方でなく文庫タイプの安い方。 事務所を設立するかしないかの頃、必死になって読破した。 もう十年くらい前。 その当時から既に世界の最前線で戦っていた。 「Y2K」なんかは大きな影響を受けた気がする。 あの頃は、なぜニューヨークなのかよくわからなかった。 その研究と現在の中国でのビッグネスなプロジェクトの関係とか。 今、もう一度再考しようと思う。 中国と言えば、上海万博中国館のデザイン問題とかが報道されている。 中国館のデザインに対して、報道や一般の人の認識が既に間違っている。 似ていると言われる作品が既に違っている。 違う情報を鵜呑みにして、正確な議論は出来ないのに、そういう指摘もないままに盗作したという事だけが一人歩きしている。 あぁまたかみたいな感じ。 万博の施設デザインだけで語るのならば、あの日本館のデザインは何とかならなかったのか。 最初に見たときは、テーマパークのパビリオンかと思った。 安藤さんの「光明寺」は中国館とあまり似ていない。 セビリアの日本館に至っては、言いがかりにしか聞こえない。 これが盗作なら、P・ジョンソンはミースに謝らなければならない。…

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synapse

  Photo:Brain by dierk schaefer 脳の神経細胞はそれぞれがシナプスという構造で結合されている。最近までシナプスの基本的な構造が僕自身わかっていなかった。 結合というとがっちりくっついているイメージだが、実際はすき間が空いていて 細胞内の伝達機構と異なる方法で情報を伝達している。 筋肉や網膜の情報など瞬時に、しかも確実に情報を伝えなければならない場合は 電気シナプスと呼ばれていて、脳細胞のそれとは区別されている。 ちなみに脳細胞の多くは化学シナプスだが、電気シナプスは海馬などの重要な記憶を受け持つ部分にも見つかっているらしい。 まるで、コンピュータの接続規格のよう。 さて、建築にも海馬並に記憶しておかなければならない知識はたくさん必要なんですが 僕の脳は化学シナプスにしか容量は残っていないので、ひたすら弱く、しかも低速な結合を ブルーレイ並に大容量にするため、せっせとカルシウムイオンを放出しているのです。 事務所にはそのための書籍があるのですが、気に入った本はやはり何度も開きたくなります。 そこで見つけた一文に僕のシナプスからドッとイオンが放出される感じがしました。 それは、中村好文著『続・住宅巡礼』にてシーランチの章。 「偉大な建築ぶつの実感を…

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建築士と建築家

最近よく仕事をして頂く業者さんの自宅です。 設計自体は関わっていませんが、私の仕事からヒントを得た(とご本人が仰る)部分が 多々見られます。一度設計について私の持論をお話しした事もありまして、それに賛同していただいた事もありますので私が見ても参考になるものが沢山ありました。ただそこで感じた事は設計者の不在が気になりました。 その方(施主)は設計者ではないので、結果として装飾的に建築をコントロールすることになります。それは逆説的に施主のセンスの良さを引き出している事になるのですが 本来は設計者がコントロールすべき所を施主がしてしまっているということです。 一般的には建築士(あえて士をつけます)は骨組み所謂構造を担当するものという認識が多くありますがそれは本質ではありません。 さらに建築士というのであれば二級と一級の区別がありそれぞれ担当能力に違いがあります。単純に一級が良くて二級が駄目という事ではありません。 では建築家とはどういう存在か。 少なくとも建築士の資格のない人は建築家ではないと私は思います。その建築士のなかでも優れた建築をつくる人が初めて建築家と呼ばれるべきですが、現在はその境界線は曖昧です。でも建築士=建築家ではないし、設計を良く知っている素人=建築家でもないと思います。…

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GA_japan

建築雑誌の「GA」も100号に到達しました。正確にはとっくに101号も出ているのですが 現場が忙しくて、ほとんど”見た”だけで終わっていたので、遅ればせながら熟読しました。 さすがに読み応えがありますので、ご興味のある方は是非一読してみて下さい。 私の場合、建築をつくることを志してまもなく創刊され、当初からその美しい写真と裏にある膨大な知識に圧倒され続けていました。 他誌と比較すると、明らかにその編集方法は違います。 明確な個人の意志を感じるし、それと同時に建築に対する愛情を感じます。 そして、日本はこれから世界水準の建築をつくらなければならないし、それをつくれる土壌がある事も知りました。 しかし、それに日本人自体が気づいている人が少なすぎるのが私の印象です。 東京から移ったときにそれは特に感じました。 建築に対する評価は、公共建築だけでなく個人住宅であっても町並みを形作る重要な存在です。 そのデザインに対して施主が満足すればいい、あるいは満足していないから駄目ということだけで判断は出来ません。 建築はそれが個人の資金で建てられたものであっても、広く社会的な評価が得られないとするならばそれは単なる大きなゴミに匹敵するものです。 だからこそ、施主になるならばどう振る舞うかという”施主道…

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スタディーズ・イン・オーガニック

隈研吾建築都市設計事務所著『studies in organic』 著者が設計事務所になっているのがちょっと変わっていて、値段も手頃だったので読んでみました。 隈さんの建築は以前から好きでよく感動させられました。 広重なんかは近くに行くときは必ず寄らせてもらってます。 最近はご自身も語るように新たなフェーズに向かっていることを私も感じていて、それから「隈作品」からちょっと距離をとるようになりました。 そんな状況だったので、今の隈さんはどんな事を語っているのだろうかと興味がありました。 巻頭の論文は私にとってはとても意味のあるものになりました。 それは、私自身が悩み苦しみながら格闘している様子と共通するものを見つけられたからでもあります。 私のフェーズは相変わらずに小さな「リング」でしかないけれど、それに対応する戦い方も考えなければならないなぁと再認識するとともに、フェーズを進化させていく努力もしなければならないと感じました。 それが、隈さんのように華やかなものにならなくとも。 設計事務所として書いているというのが、もしかしたらそういう意味なのかもしれません。…

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住宅の意味

  Photo:P1060316.jpg by End User 最近、住宅をつくることにちょっと迷いが出てきました。 そして、アートを提供するべきという自分の信念にも。 このブログは自分との対話をテーマにしているので、出来るだけ自分の思うことを書きたいと思います。 それは、クライアントの満足度に対する疑問です。 建築は公共的なものでその評価は客観的であると僕は思っています。 でも、客観的にいくら評価を得てもクライアントの満足度はそれほど比例しない場合があります。 例えばご夫婦であれば、旦那様と奥様の温度差の違い。 夫婦であるから同じ感覚であるという訳ではなく、違いがあって当然。 だからこそ、計画段階での打ち合わせや図面の確認で、そのギャップを埋めていく訳です。 でももしも埋まらなかったら? 埋まらずに建築が完成してしまったら? 僕は建築には愛が必要だと以前の記事に書きました。 それはクライアントの愛が一番必要なのは言うまでもありません。 きれいなだけでは愛されない。 人を好きになることに理由は必要ないように住宅を愛することに理由はない。 気に入ることが最大の理由であれば、気に入らないものに愛情は生まれない。 ではどう気に入ってもらえるか考えなければならないが、僕はクライア…

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オープンハウス

オープンハウスが無事に終了致しました。ご来場の方には心より感謝致します。ありがとうございました。 そして、クライアント様のご好意にも感謝しております。 当日は、以前お世話になったクライアント様もかけつけてくださいました。 特に「#5115」のクライアント様は終了時間を過ぎても話が尽きなくて、そのまま場所を変えて話し続けました。 お会いするのも久しぶりで、実は今年の夏のあたりからお会いしようとお互いにスケジュール調整をしていたのですが、この現場の都合もあったりしてなかなか時間が取れなかったのです。 いつも時間を忘れて話し続けてしまうのですが、あらためて感じる事はこの方の建築に対する”愛情”といいますか、自分の住宅に対する愛をひしひしと感じるのです。 それは、私にとってとても嬉しい事で感動してしまいます。 その方の言葉の端々に自分の家の感覚が体にしみ込んでいるという感覚を感じます。 そしてそれは、かなりのハイレベルな感覚に成長しているように思えるのです。 建築家の感覚に近くなる程に。 だから、建築評論家のような事をさらっと言ったりします。 「それは、小澤さんに教えられたことですよ」 そう言われたとき、私の思いが建築を通して伝わっているのだなと実感します。 建築を理解する事はとても時間のか…

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空間の質

前回紹介した岸氏の著書の中で、美術館に対する思考があります。岸氏は以前より、F・ゲーリィによる『ビルバオ・グッゲンハイム』を高く評価していたのを知っていたのですが、なにがどう良いのかを再認識しました。 さらにそこにある空間の質と私が何を求めて建築をつくっているのかという本質的な問題を認識する事になりました。 私にとって美術館というものはあらゆるビルディングタイプの中でも特別な存在で、設計者なら美術館の設計を依頼されて喜ばない人はいないでしょう。 そして、私のつくる住宅を見た一般的な意見として、よく言われるのが「店舗のようだ」という言葉について。 今まではさほど気にしていなかったのですが、それは空間の質によるものなのか?ということです。 岸氏によると、テーマパークというのは現実空間から仮想空間に巧みに導入するために、中間領域として商業空間を挟み込む。そこで観客は気がつかないうちに本格的な仮想空間に導入される。それがテーマパークに共通する空間構成である。 そしてそれが、「気がつかないうちに」成立するのは、商業空間は現実の空間のなかでも無意識に半仮想的な空間だというコンセンサスも存在するからだと思う。 そうなると、私の建築空間に対する一般人の評価である「商業空間のよう」というものは、ある種…