Category Archives: 建築デザイン思考

illumination

照明は建築にとって重要なデザイン要素の一つ。 でも、その建築をたった一枚のショットだけで表現するとしたら 僕は、夜景は絶対にいれない。 作品集の写真が夜景ばかりだったら、僕はその建築家を信用しない。 それぐらい建築にとっては、諸刃の剣だと思っています。 建築のフォルムは太陽光の中で常にデザインされている。 だから、昼間どんな光を入れ、またはさえぎるかを考える。 クライアントから、夜景がきれいな家がいいということを たまに言われることがあるが、実は僕はあまり興味がない。 というか、夜景は照明を入れれば、どんな醜悪な建築でも そこそこ美しく見える。 〇〇ホテルが良い例。 しかし、照明がいらないと思っている訳でも、馬鹿にしている訳でもなくて 本当に夜景を美しくしたいときは、本職の照明デザイナーにお願いすべき。 でも、そんな予算も無いときは、結局自分でデザインすることになるのだが これが、なかなか難しい。 同じ建築が、こんな見え方をするのかと思うほど変化してしまう。 それは、ある意味建築表現的にはNGだったりする。 だから、最低限の照明だけというデザインの方がしっくりきたりするのだけれど。 太陽光をデザインテーマの中心にすることは、ジレンマもあります。 忙しい家族の家は、昼間に人がいることが…

TNデザイン一級建築設計事務所

虚しさと悲しみと

  Photo:Cat by Moyan_Brenn 街がこんなにも一瞬で破壊されていく光景は建築に関わる人間として、絶望的な光景で、言葉を失ってしまう。 残っている基礎を見ていると、建物はコンクリートでつくるのが最善とも思えてしまうが、そんなに単純ではない。 実際に、チリ地震の経験で自宅をRC造で建て替えた老夫婦はその住宅の2階で亡くなってしまった。 津波は、その遥か上まで襲っていったから。 全てを失ったと語る若者の目には涙もなかった。 淡々と語る言葉に、その苦しみが伝わってくる。 被災された方の未来に、少しでも光がさすことを祈って。[:en]街がこんなにも一瞬で破壊されていく光景は建築に関わる人間として、絶望的な光景で、言葉を失ってしまう。 残っている基礎を見ていると、建物はコンクリートでつくるのが最善とも 思えてしまうが、そんなに単純ではない。 実際に、チリ地震の経験で自宅をRC造で建て替えた老夫婦は その住宅の2階で亡くなってしまった。 津波は、その遥か上まで襲っていったから。 全てを失ったと語る若者の目には涙もなかった。 淡々と語る言葉に、その苦しみが伝わってくる。 被災された方の未来に、少しでも光がさすことを祈って。…

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interior

ランキングカテゴリーを「モダンインテリア」に変更しましたので インテリアについて一考。 インテリアというのは、建築か否か。 という問はその問い自体がナンセンスなのは言うまでも無いのだけれど一般的にはインテリアデザイナー などという職種があったりしますので建築とは切り離されている印象があります。 建築士の資格がなくても、デザインが出来るということもあるかも知れません。 しかし、建築にとってインテリアだろうがエクステリアであろうが それが建築とは別にデザインされること自体に違和感があります。 建築構造と表裏一体でデザインされるというのは、実はとても高度で難易度が高いのです。 かつて、ポストモダンが盛んに叫ばれたときは、構造は完全に裏方でありました。 骨組みは置いといて、化粧をどうやって施すかを競っていたように思います。 そういうハリボテ的なモダニズムはバブルと共に消えて言ったわけですが その対極にある、ミニマルモダニズムは、構造と如何に融合するかに掛かっているので 自ずとインテリアもストイックな緊張感を醸しだす様になります。 なかには、構造自体をインテリアにしてしまうこともあります。 そちらはハイテック・アーキテクチャという別な潮流も影響していると思われます。 しかし、構造に対する姿勢と…

長野のデザイン住宅設計事務所

55!miffy

ミッフィー展に行ってきました。 世界中で愛されているキャラクターです。 今年の干支でもありますし、縁起が良さそうです。 5年前の50周年の時も、群馬のハラミュージアムの展示を見ました。 それから毎年新作を描かれているのは、今回はじめて知りました。 そして、Dick Bruna氏のインタビュー映像は、僕にとって貴重な言葉となりました。 Bruna氏の作風は、とてもミニマルな作業の繰り返しです。 ミッフィーを書いてみればわかることですが、あれだけの線と点で様々な表情と感情を 表現することは並大抵ではありません。 要素を削りに削り最後の緊張感だけを残して、表現することは ミニマルな表現世界となんら遜色の無い世界です。 そして、その振る舞いはゲーリーをはじめとする 現代建築家の振る舞いと同じであることも知りました。 グラフィックは2Dの世界ですが、建築は3Dという違いがあります。 しかし、建築は作品として表現されるときは2Dとして認識される方が 圧倒的に多いように感じます。 モダニズム建築はそれを大いに利用して、インターナショナルスタイルを確立しました。 だから建築家は、2Dとしての構成を気にする傾向にあります。 しかし、建築は3Dとしての魅力、迫力を忘れてはいけない。 そして、2Dと3Dは…

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内向き

Photo:[FA CUP] Spurs vs Bolton :: 1 by Crystian Cruz 「杉山茂樹のBLOG」をたまたま見つけた。 杉山さんのことをそこで初めて知ったのだけれど、とても興味深いことが書いてあった。 ガラパゴス化の弊害 サッカーが主題のブログですが、日本の国民性を表しています。 国際化が叫ばれていたのは、もうずいぶん昔のように感じていましたがやっぱり、日本は島国なんだなぁと感じてしまいます。 インターネットにしても、検索されるのは、関連の言葉が圧倒的に多いようです。つまり、日本に個人という概念自体が根付きづらいのでしょうか。 他人との関わりの中で、生きているとはいえ、あまりに「内向き」なのは考えものです。 なにより、世界が狭いのは息苦しい。最近のことで気になるのは、フィギアスケートの選手のこと(特に女子)。 マスコミは新たなスターを見つけたと言わんばかりに報道してます。 でも、それ以外の選手のことが見たくて中継観てる人もいるのに一方通行の視点だけでピックアップするのは見ていて悲しすぎる。 新し物好きを否定するつもりはないけれど、マスコミのあの変わり身の速さにはちょっと恐怖を感じます。 ガラパゴスでいいのは携帯だけにしてもらいたいもんです。 まぁ他人の評…

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宇宙論

  Photo: M31, M32, M110 – Andromeda Galaxy by Zio81 突然ですが、世の中の宇宙論の定説は、相対性理論とビッグバンということになっています。 僕は、小学校の頃に宇宙の魅力に魅せられて、夜空の星や宇宙の果てに興味をもっていました。 両親から望遠鏡をプレゼントにされたその日から、札幌の冬空を一生懸命見ていました。 冬は空気の温度が低いので、またたきなどの大気の影響を最小限にすることが出来るのです。 その時代のアニメは、宇宙戦艦ヤマトに始まり、銀河鉄道999、機動戦士ガンダム。 みんな宇宙を舞台に物語が始まります。 そんな影響もあったかなかったか、星を見るのが大好きでした。 できれば宇宙飛行士になりたいと思っていましたが、あるとき、とてつもなくお金がかかると書いてる本がありあっさり諦めました。 実際は、優秀であれば奨学金がもらえたりするので、その本の情報はウソではないにしても、僕の子供の夢は儚くも踏みにじられてしまったのです。 まぁその程度の夢ということですが。 でも、宇宙に対する興味自体がなくなったわけではないので、その後の宇宙論の展開自体は興味深く眺めていました。 子供の頃は単純に、自分がオトナになる頃はきっと、月ぐ…

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double standard

「空気」と「世間」鴻上尚史著。 日本の社会構造を的確に捉えていると思います。 僕自身、子供の頃から疑問に思っていた「世間」というものの実体を解明してくれたように思います。 著者は、いじめられている中高生に向けて発信したいと述べているように、とても分かりやすい表現で書かれています。 そして、欧米との違いを優劣で捉えること自体が間違っていると何度も主張しています。 それは、とても納得のいく結論だと僕も感じました。 日本は、敗戦によって多くの変化を強制的にさせられてきたと思います。 それは、先の見えない暗闇を全力疾走しているようなものだ、 と表現されていますが、そんな中で人々は何を支えに生きてきたのか また、そうせざるを得なかったかを考えさせられました。 そして、勝者であるアメリカでさえも、支えが必要であることも。 欧米と日本は、バックボーンが全く異なるということ。 当たり前だけれど、それを明確に理解している人がどのくらいいるのか。 いじめの問題や、最近の事件に関することをどれくらい説明できるだろう。 僕は小さい頃から、ここでいう「世間」とか「空気」に対して 疑問に思っていたことがたくさんありました。 しかし、それは成長の過程でうやむやにしたり、忘れていくことで、無理やり納得してきたように…

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作家性2010

  Photo:Walt Disney Concert Hall by nickboos 以前も同じ視点で、エントリー 書いたのですが・・・。 5年も前の文章なので、リンクすることがちょっと恥ずかしい・・・。 最近、小説の盗作とか、詩の盗作とか、歌の盗作とか、そのアイディアの起源に対する問題が多い。 それは、明らかにインターネットの影響だと思われるが。 膨大な情報の中で、それが誰の発案かを探ることは、ある程度は出来るかもしれないが、厳密には不可能だ。 すべてをネット上のデータとして管理しているわけではないから。 ネットにばらまかれたものから、ヒントを得ることは悪いことではないと思う。 しかし、それはヒントでしかないという状況をいかに理解するかが重要だと思う。 建築はそういう意味では、デザインソースに対して、割とオープンな世界である。 苦労して決定したディテールを惜しげもなく情報公開しているのは、とても素晴らしいことだ。 でも、そういう情報を寄せ集めて建築をつくれば、良い建築が出来ると勘違いしてはいけない。 私の知っている人で、こういう人がいた。 「日建設計のディテール集がほしいんだよね。」 最初は、この人の話している意図が分からなかったが、どうやらそのディテールを寄せ集めれ…

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都庁

磯崎新の「都庁」平松剛著。 小説は伊坂作品を除いてあまり読まないのですが、こういう建築が絡んでいたりすると俄然興味をそそられます。 平松氏の前作、「光の教会安藤忠雄の現場」もしっかり読ませて頂きましたので、今回も早速購入。 この作者は、かつて建築設計業界の先端で仕事をしていた異色の経歴の方です。 なので、設計の現場を少しでも知っている人ならば、とても楽しめる内容なのです。 著名な建築家といえど、自分と同じような悩みを持っていたり、苦しみを抱えながら、障害を乗り越えていくというストーリーは 脚色をしなくとも十分に心を打たれます。 磯崎さんの「都庁」計画は、僕の中ではとても衝撃的な事件として、心に残っています。 当時の雰囲気は、丹下さんの出来レースだという意見がほとんどでした。 そして、磯崎さんは基準法違反という理由には反感を覚えた事を記憶しています。 あの案を採用できる審査員は当時の状況ではいないだろうなとも、同時に思いました。 案の優劣が全てではない、コンペの世界は難解です。 どんなに公正に行っていたとしても、「どうせ出来レース」という印象はなくなりません。 もしも、あの磯崎案が採用されていたら、そういう「空気」を打ち破っていたかも知れません。 歴史に刻まれるアンビルド建築は、建築と…

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web3.0

Photo:Web3.0 Presentation WordCloud by bonus 『ウェブはバカと暇人のもの』中川淳一郎著 図書館で、タイトルに惹かれて読んでみました。 web2.0という言葉さえよく理解していなかったのですが、ネットの世界ではもう過去の話のようです。 web2.0のさらに進化形ということでweb3.0なんてのも登場するとかしないとか。 さて、私もブログを初めて5年くらい経ってしましましたが、その間ひとときも休まずに更新し続けたワケではありません。 年間に更新が数えるほどしかないというのは、結構あります。 多忙により更新出来ないことが、ほとんでです。 書く気にならないことも、しばしばですが。 それを考えると、頻繁に更新が出来るのは、「暇」があるからかもしれません。 著者が言う「リア充」(リアルな生活で充実している人)は、わざわざネットに有益な情報を垂れ流しにはしない。 つまり、ネットの情報は既に既知であり換金するほど価値がない情報である可能性が高いということ。 打ち合わせの時に、クライアントに「ネットで調べた~なんですが・・・。」と言われると、ちょっと身構えてしまうのですが、 この「調べた」というのが、実はクセモノで、検索にもやはり知性やテクニックが存在すると…

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模型

模型作成は建築を考える上で、非常に重要なツールです。 一般的にアトリエ事務所では模型はスタッフの仕事として位置づけられていますが 私自身の重要な仕事として位置づけています。 ただし、これにはメリットデメリットがあってどちらが良いかはわかりません。 模型が単なるプレゼンツールとして考えるならば、私が作る必要は余り無いかもしれません。 しかし、模型を作ること自体が建築を考えることに繋がる気がしています。 さらに、何かを自分の手で作ることは建築だけでなくモノづくりの作業として重要だと思います。 かつては、図面がその手作業の重要な役割を担ってきましたが、CADの普及によってもはや クリックの回数で図面が出来上がります。 そういった意味でも模型はスケッチと並んで手作業の重要な位置を担っていると私は感じます。 しかしその反面、やはり作ったものというのは思考を定着させてしまうものです。 つまり、案を簡単に捨てられなくなることです。 設計という作業は、いいものを探りだす作業なので、悪い案で模型ができてしまうと ある種の説得力をもってしまい、判断が鈍る可能性があるということです。 安藤忠雄さんがテレビ番組の取材の中で、模型を見ながら突然 「こんな柱とればいいんだよ!」 と言いながら、スタッフの目の前で…