Category Archives: 建築行脚

青森県立美術館

休みを利用して行ってまいりました。aomori-museum! シャガールは好きな画家でもありますが、シャガール展の存在すら知らずに イザ!青森へ!という感じです。 『アレコ』の背景画は圧巻です。 入場料が少しお高いのですが、見る価値あります。 さて、青”木”美術館ですが、土にこだわった作品です。 隣接する縄文文化施設と一緒に見ると、古代の「土」と現代の「土」との関係がより明確になります。 土へのこだわりと同時に「白」へのこだわりも感じられました。 その白さは土への対比として用いられていますが、全体的に白さが強調されすぎているようにも 感じられました。 エントランスの感じはバランスが良かったです。 最近、白い美術館が多いような気がしますが流行なのでしょうか。 展示空間はホワイトキューブが常識化しているようですが、それを超える空間を欲しているような気もします。 そういう意味で、青森の土壁に展示している絵画がとても新鮮でした。 いい作品はどんな展示空間にも負けないし、そういうせめぎ合いで美術作品を評価してもいいと思います。 常設展示も非常に面白くて、美術館のソフト面もクオリティーが高いと感じました。 建築に興味のある方は是非隣接する縄文遺跡にも触れてほしいと思います。…

TNデザイン一級建築設計事務所

国際子ども図書館

東京行脚その3 「宝物館」のすぐ隣にある「国際子ども図書館」。 本当は子どもを連れて行くのがベストだけど、今回は出来なかった。 次回は必ず・・・と思いながら、近寄ってみた。 実は、オープン前にたまたま見たので外観は以前に見ていたが、やはり歴史のある建築は 独特のオーラと言うか、近寄り難い雰囲気を持っている。実際、竣工当時はここに入れる子供や大人は 明らかに上流のエリートだったに違いない。 しかも、本来の計画はロの字型の平面で、現存する3倍の規模になる筈だった。 全てが完成した姿を見てみたいと思うが、これだけでも保存されたのだから良しとしよう。 建築にはこういう威厳と言うか重厚さと言うか、そういうモノも大切だなと思わされる。 しかし、それは現代建築と互いに寄り添っているからこそよりこの建築の価値を高めているのだとも思える。 安藤さんは他にも既存の建築との共存というテーマで創られたものがあるが、安藤さんらしさで言えば 「国際子ども図書館」はおとなしい感じがする。日建設計との共作という事も関係あるのだろうか。 こういった大きいプロジェクトは計画段階から雑誌等に発表されるので、そのコンセプチュアルな模型の段階から見る事があるが、同じコンセプトを持っていても実現する建築は建築家によって全く違う…

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omotesando

Photo:Opening soon by Tighten up! 表参道ヒルズについて思う事。 一般的な評価や建築業界の評価はよく知らないが、あの建築は間違いなく次世代に受継がれていく建築だと思う。 それは、安藤さんの設計だからとか、森ビルがつくったからとかそういうたぐいの基準ではなくて、単純に 歴史を刻み込んだ代表的な建築だと思う。 伊東さんの「tod’s]は凄い。妹島さんの「Dior」も青木さんの「Louis Vuitton」も時代を象徴する素晴らしい建築だと思う。 でも、きっとあの表参道で愛されて末永く建築として生きていけるのは「表参道ヒルズ」しかないかもしれない。 他の建築にない規模を持っているけれど、他の建築家を圧倒するようなデザイン的な斬新さをウリにしている訳でもないけれど。 でもだからといって、その辺の大規模開発と一緒だと思ってしまうのも違うと思う。 明らかに、安藤さんにしか出来ない事をやり遂げていると思う。詳しく述べるのは評論家ではないので避けるとして、そこに安藤さんらしさをとても感じる。 森ビルと共同で設計していることも、単なるパッケージデザインのようなのも、それだけに終わらせないよといいたげな佇まいなのも。 あの建築を森ビルが単独でまとめ上げたら、ど…

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法隆寺宝物館

東京行脚の続き。 表参道ヒルズには目もくれず、上野へ。 駅からの程よいアプローチが心地よい。やっぱり都市には大きな公園がないと美しくない。 宝物館はそれが独立した施設だと思っていたのですが、国立博物館の一施設なのは知らなかった。 本館で特別展示をやっていて、人だかりになっていたが宝物館に向かう人は少ない。 資料館が工事中なので、アプローチの雰囲気は台無しだが、奥から発しているオーラが漂ってくる。 この設計者は、最近ではニューヨークの「MOMA」を完成させたが、非常に上品な建築をいくつも設計している。 「東山魁夷美術館」は何度も足を運んだが、いつ見ても心が研ぎすまされるように感じる。 「宝物館」で一番印象的だったのは、やはり仏像が林立している展示空間だった。 薄暗い照明の中で柱と同化するように均等に並んだ仏像には圧倒されてしまった。 あえて側面にラベルが付けられているために、一瞬見たらそれが展示物というより、空間と一体となった 装飾のように扱われている。群となった仏像達がその強烈な存在感を発して林立している様は荘厳だ。 こういうグリッドの構成は非常に固く感じられるが、こういった格調のある空間にするには都合が良いかもしれない。…

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mikimoto

東京を離れると東京という都市の不思議さがよくわかります。 これだけ劣悪な環境なんだけど、人の多さではねのけると言うか・・・。 人が多いという事はそれだけで異常なエネルギーを持っています。 そう言う意味では、中国はもっと凄いと思うのですが。 という訳で、見てきました、mikimoto。 最近のファサード建築の最新作ですが、異常なほどのフラットさを実現させるために注がれた職人の格闘の痕跡がこの建築の価値である。 鉄は塗装の表現であると言ったのは藤森照信氏であるが、塗装はその塗られた下地を最も素直に表現しているとも言える。だから、何に塗るかという事が塗装の表現では重要だし、だからこそ鉄板による無目地の面にこだわる意味があるのではないだろうか。 表層というと目に見えているたかだか数ミリの世界で完結しているように思えるが、人間の目はそんなに安っぽいものではない。 その奥にあるエネルギーを無意識に感じ取っているはずだ。 それは、例えば職人に大事に使用された道具が異常なほど美しく見えるあの感じに似ている。 現代建築は新しいだけでは建築とは言えない。その建築が立ち上がった時からエネルギーを注がれた分だけ 建築としての価値も高まっていくと思う。 建築は建築として使わない限り建築にはなりえない。…

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ホワイトキューブ

建築行脚の記録 朝日新聞山形支社 設計は妹島和代設計事務所。 これを雑誌で見た時は衝撃的でした。 実際にみても、通常の建築とは明らかに異質なオーラが漂っている。 妹島さんの建築を見るたびに、建築の抽象度の問題を考えさせられる。 抽象的な美しさの先に何があるのか・・・。 その抽象さに勝る美しさは無いのだろうか。 その抽象さと人間の具象さは乖離していかないのか。 住宅を創ってみてあらためてその問題の深さを感じる。 この建築は住宅ではないが、建築である限りその抽象と具象の間で揺れ続ける。 抽象性を落とさずにブレイクスルーができるのだろうか。 私自身の課題でもある・・・。…

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卵ドーム

久々のブログ更新です。 世間の民族大移動に同行してきました。 車にて帰省したので、長旅になりました。 途中でいろいろ建築を見ながらの予定だったのですが、そんな余裕は無かった・・・。 今回の記録 大館樹海ドーム 設計は伊東豊雄事務所。 以前に一度訪れた事があるのだが、二度目の訪問。 内部の気持ち良さは最高です。木のメッシュに包まれている感じ。 ドームの屋根を水平に浮かしていて視線が抜けている。伊東さんの曲線は妹島さんにも引き継がれているのがよくわかる。 しかし、それが全面に出ているのではなく滲み出てくるようなデザインになっているのが共通している。どちらかと言うと、伊東さんの方が意図的にそれを制御している感じ。 妹島さんはもっとストレートな感じがする。 ドーム建築と言えど、優れたデザインは美しい。 組織事務所の作品が多数あるが、原さんや伊東さんに及ばない。 外構の照明のデザインがシンプルで再発見。 隣の敷地に新たに体育館が建設されていたが、デザインがイマイチでドームとの連続感はまるで無い。誰の設計だろうか・・・。…

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館林

建築行脚の記録-10 群馬県立館林美術館 設計は高橋てい一/第一工房。 これは雑誌で見た時から、美しくて一度見てみたかった建築である。 しかし、何か違和感があると思っていたら回廊に面する池に水が入っていなかった。 受付でその事を聞いてみると、夏場は水が汚れるらしく、ここ数年は水が入っていないとの事。 洗浄するのが大変だそうで、水庭ならぬ石庭となっていた。 水庭の方が美しい事を強調しておいたのだが、その後変化は無いのだろうか。 あの水庭は、さぞ美しいだろうと想像しながら展示を見ていた。 展示内容も非常に興味深いものがあり、楽しめた。 図書コーナーもあったのだが、エントランスに直結しているので、もう少し区画されていれば良いと思うが・・・。 高橋氏は以前コンペの審査会の会場でお会いした事がある。 まぁ会ったというより、遠巻に見かけたというのが正しいが。 その時は、パワフルな人だなぁという感じだった。 建築のデザインとしては非常に静かで寡黙だが、それを創るためにはパワフルさが必要という事だ。 レストランのケーキはかわいらしくデザインされていて美味しかった。 心残りはフランソワ・ポンポンの常設展示が見られなかった事でしょうか・・・。…

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フォレスト益子

建築行脚の記録-9 フォレスト益子 設計は内藤廣氏。 この日は今年最初の夏日で、暑い日だった。 宿泊施設とレストラン、無料の休憩所と展示室からなる複合施設。 それぞれの規模が小さいので、非常に親しみやすいスケール感を持っている。 内藤さんは屋根にこだわりがあると思うが、それは天井にも表れている。 美しい屋根には美しい天井がある。 この建築に限らず、内藤さんの創るモノは一見すると普通に見える。 しかし、それは普通を突き詰めた結果、全く違う質に変化しているように見える。 普通であろうとしているが普通ではいられないような・・・。 建築家が創るのだから当然と言えば当然だが、一般的には普通であろうとすると本当に普通で終わる。(笑) この建築を見ていても非常に穏やかで、優しい。 しかし、ディテールは非常に詰められているし、外観の見え方はかなり気を配っているようだ。 隈さんとは、違う意味で日本的な空間だと感じた。…

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川/フィルター

建築行脚の記録-8 川/フィルター 設計は隈研吾氏。 半ば隈さんシリーズになっていますが・・・。 福島県に初めて行きました。 街があまりに大きくて少々驚きました。 ビッグパレットふくしまも見に行きましたが、あまり好きではなかったので ものの10分くらいで立ち去ってしまいました。 だから、記録が無い事が記録とでも言いますか・・・。 コメントがしづらい建築でした。 話がそれましたが、隈氏のルーバー作品の代表作です。 このルーバーは、多分学会賞を取った能舞台でも使用されていたので、その頃から その片鱗を見せていたと思います。 てっきり木造だと思い込んでいましたが、ほとんどがRC造で地中に埋まっているような建築でした。 後に全てを埋めてしまう作品も創っていますが、その形式にも繋がるようでした。 駐車場から見ると本当に平屋のようで、ガラス面にわざわざ地下に席がある事をでかでかと貼付けて主張していました。 この形状を見て帰る人もいるのでしょうか。 商業施設を見ていつも思うのは、そういった貼り紙に関してですが、日本の商店はムダな貼り紙が本当に多いと感じます。 その点、ヨーロッパは規制も多いのでしょうが、ほっといても誰も貼り紙をしない雰囲気があります。 さて、ここはそば屋さんなので早速店内に入りまし…

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石の美術館

建築行脚の記録-7 石の美術館 設計は隈研吾氏。 この建築も二度目の訪問。 小さな美術館だが建築的には非常に興味深い。 スケールの小さな空間が水を媒介にして緩やかに繋がっている感じが心地よい。 建築というよりランドスケープのような感じ。 コストが一番苦労したそうだが、そんなように見えないのが凄い。 隈さんは色々な素材を使うので節操がないように見えるが、こういう手法が可能なのは コストコントロールの上手さのせいかも知れない。…

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広重

建築行脚の記録-6 馬頭町広重美術館 設計は隈研吾氏。 こちらは、二度目の訪問で以前は3年前。 以前よりも屋根のルーバーの色が退色してきて、良い感じ。 所々、苔らしきものが出てきてますます日本建築に近寄っている。 団体客がいたりして、結構にぎわっていた。 展示自体に物量が無いので、滞在時間は長くないようだが 庭を眺めているだけで、気持ちがいい。 美術館全体をルーバーで覆う。 言葉にしてしまうと、これだけを徹底した建築である。 もう少し詳しくみると、ルーバーは全て天然木を使う、となる。 極めてシンプルである。 しかし、それを徹底するには並大抵の努力では実現しない。 建築は素材を限定した時点で、とたんに高度な技術が要求される。 それは、建築の素材がそれぞれの性能によって細かく使い分けされているからだ。 それを、知る事や知っている事が技術者=プロの役割だが、それを超えるのは建築家しかいない。 この建築はあたかもルーバーだけで創られているように創っている。 そのイメージがなければ、最終的な建築がこのようなモノにはなりえない。 駐車場の取り方が建築のクオリティに対して、安易な気がするが多分それはコストの関係だと思う。 建築にコストをかけたという訳ではなく、コストパフォーマンスが建築の方があまり…