Category Archives: 2013

バルバラ・カポキン国際建築賞

2013年度のバルバラ・カポキン国際建築賞の優秀作品(The Best 40 Works)に当事務所作品「SI-house」が選出されました。 →websiteの”PREMIO”から”Migliori opere”をクリックすると今回の受賞作品名が表示されます。 金賞の受賞は逃しましたが、世界各地から応募された中での40選に残れたことは、大変光栄に感じております。 それも、世界の舞台で小さいながらも評価を得られたことが、私にとって大変な励みになります。 建築家という仕事は、長い時間を掛けて世界を構築していく側面が多分にあると思います。 その過程において、建築家は世の中のトレンドのなかで評価されてしまうのは当然です。 しかし、トレンドというのは得てして行き過ぎたり、間違った方向に行くこともあり、必ずしも正しい方向であるとは言い切れない部分もあります。 建築家も世の中の支持がなければ生きられないのも現実です。 ですが、支持を得るために建築を作っているわけでもありません。 だからこそ、自分の信じる建築が何らかの評価を受けるということは、何事にも代えがたく最高の喜びの瞬間でもあるわけです。 そして、建築は他の芸術と違って、依頼主に提供するという大前提があります。 クライアントの影響が少なから…

キース・ヘリング

出雲から帰ってすぐに、機会があって行きました。 「中村キース・ヘリング美術館」 アプローチがあえてわかりずらいように作ってある感じです。 ポップな作風は、北川原さんの設計ともなんとなく通ずるような気もします。 ただ、曲面や斜め壁を多用しているので、汚れ方に偏りがあって 外壁はひどく劣化が進行しているように見えます。 私設の美術館のようで、入館料が高めな割にメンテナンスに手が回っていないようにも感じました。 個人的な感想ですが、北川原さんの建築にはどうも心が響かない・・・。 佐世保のコンペの時も感じたのですが、図面やプレゼンテーションはとても素晴らしいんですけど 建築になった途端・・・なんか違うような・・・。…

SHIMANE

今回の旅の締めくくりは、内藤さんの大作「島根県芸術文化センター”グラントワ”」。 珍しい双子台風の直撃を受けた大雨の中、半ば強引に向いました。 こんな日に訪れる人は、さすがに少ないらしく人もまばら。 というかスタッフの方が多い。 そんな中、インフォメーションで「アンケートですが、来館の理由をお聞かせ下さい」 と言われ、「この素晴らしい建築を見に長野から来ました」と答えた。 「ホールは見ることできますか?」と訊ねると、「予約がないと案内は出来ないんです・・・。」 まぁ当然の対応ですので、あっさり諦めまして、美術館に入館。 ひと通り堪能したところ、お茶でもしようかなと思ってウロウロしていたところ スタッフの方に、「館内の案内を希望された方ですか?」と聞かれ、とっさに「違います!」と言いましたが どうやら、アンケートしたスタッフの方が気を利かせて確認してくれたらしく 予約は無いけど、案内しましょうということになりました。 そして、なんとなく”偉い人オーラ”を発する方が登場。その方はなんと、副館長。 これは、大雨の奇跡!と感謝しながら、大ホール、中ホール、小ホールと楽屋までほぼ全ての部屋を案内して頂きました。 設計上の小さなミスというか、教訓といいますか、気をつけるべ…

IZUMO-4

出雲大社から、歩いて数分のところに「大社文化プレイス」がある。 ちょっと小雨がぱらついている中・・・。 この頃の伊東建築はすごく好きだったので、ちょっと感動・・・。 意外なところにあるもんだなぁと思いながら。 出雲を意識せざる負えないような場所。 でも、コンペで勝ったときは全く別の案だったのですが、市長が変わって初期案を否定されてしまったらしいです。 そして、再度設計しなおした案が実施案となりました。 初期案の方が、出雲らしい形態だった記憶があります。 建築を実現させるということは、とても困難なことだということが良く分かります。 建物見ただけでは分かりませんが。 平日なので、ホールの利用者もなく図書館だけが、ひっそりと開いていました。 誰もいないホールに佇んでいると貸し切りのように空間を独り占めしている気分。 ここでも、それなりな痛み具合が目につきました。 なんとかならないのかなぁ。…

IZUMO-3

出雲大社のすぐとなりにある「島根県立古代出雲歴史博物館」。設計は槇事務所。 槇事務所は長野でも市民会館の工事が進んでいます。 槇さんの作品は、本当に美しくて惚れ惚れします。 引きで眺めると形態と配置、ランドスケープが一体となっているのが分かります。 出雲からのエッセンスを槇流にデザインされています。 展示も興味深いモノがたくさんありました。 カフェのコーヒーもなかなか美味しかったし、出雲大社に訪れた際は是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか。…

IZUMO-2

「出雲大社庁の舎」の反対側に宝物殿があります。こちらも菊竹作品。 手摺のデザインがなんとも美しい曲線を描いています。 建築も良かったのですが、こちらの展示がとても興味深いものでした。 係の方がとても詳しく説明してくださいました。 古代の歴史に興味のある方は楽しめると思います。 本殿の周りを一周して次なる目的地へ。 それにしても小雨の降る中、観光客でいっぱいでした。 さすが出雲。…

IZUMO-1

なかなか内容が濃かった広島から出雲へ。 伊勢か出雲か両方かを迷った結果です。 菊竹建築見るべきってことで、いざ出陣。 「出雲大社庁の舎」 やっぱり実作の迫力は写真から受けるものとは全く異なることを改めて感じます。 そう言えば、肥満のメタボと”メタボリズム”のメタボは同じ語源なんでしょうか。 スペルを見る限り同じようですが・・・。肥満的建築? 丹下さんや谷口さんの打放しと全く異なる表情と佇まい。 これだけの時間を経たからこそ、その狂気的な造作のアクが抜けて独特の雰囲気を醸し出しています。 時間の経過というのは、時に残酷でしかし美しい。 かたや遷宮を毎回施される本殿の隣で、刻々と時を刻まれるコンクリートの塊。…

HIROSHIMA-8

窪田作品に後ろ髪を引かれながら、呉へ。 やっとたどり着きました「呉市音戸市民センター」。 途中の「音戸の瀬戸」渡船に乗りたかったが、時間もなく乗り方も分からずで バスで写真の橋を渡る。 スケール感と色の違いのコントラストが強烈。 なんとなく隈作品には珍しく、全体的に大味な感じが・・・。 大屋根の側面があっさりしてるのは、屋根を強調するためだと思いますが・・・。 屋根には、かなり拘りがある人だと思いますが、ここでは成功しているのかよく分かりませんでした。 正面に海が見えるのは気持よさそうですが。 苦労して辿り着いた割には、あまり感動できなかった。 むしろこの周囲にある、「音戸の瀬戸」や呉の造船所等の環境の方に圧倒されてしまいました。…

HIROSHIMA-7

広島市の中心から少し西側へ。 意外とわかり易い場所にありました。 「M-clinic」は窪田勝文氏の住宅兼店舗作品。 歯医者さんなんですが、かなり混んでいるようでひっきりなしに人が出入りしていました。 住宅ということもあり、あまり長居はできませんでしたが、街のスケール感と程よく溶け込んでいていい感じです。 やっぱり窪田作品は美しい。 あまり実作を間近で見たことがなかったので、なかなか感慨深いものがありました。 住宅作品をたくさん作っていますが、他の作品も見たいと思わせる魅力があります。 天気も良くて最高でした。 この日は秋らしくなく暑かった・・・。…

HIROSHIMA-6

原さんの「広島市立基町高校」 原さんは僕の尊敬する建築家の一人ですが、雲に対するこだわりを強く感じます。 初期の頃は、屋根の形に雲型がよく使われていましたし、外観では札幌ドームで雲の柔らかさみたいなものが にじみ出ています。 ここでもしっかりガラスのファサードには必ず雲が映るし それが印象的になるように常に気を使っている感じが、僕はとても好きです。 この手法は、宮城県立図書館と同じ手法です。 通常の学校建築とはかなり違うアプローチがされていますが、それこそが建築家の挑戦だと思います。 それを使いにくいという風に一蹴してしまうのはどうにも納得がいきませんが やはり使用感での批判があるようです。 こんな学校に行けたら毎日、毎日楽しいと思いますが学生たちはどうなんでしょうか。 周りの大人達はどうだっていいと思いますが。 反対側からアプローチすると雲が全く写りません。 全く別の建築みたいですね。 やっぱり、雲は効いてます。…

HIROSHIMA-5

広島でも谷口建築は見応えがあります。 「広島市環境局中工場」 この建物はなんと清掃工場なんですが、谷口テイスト満載のシャープな佇まいを醸し出しております。 エコリアムと呼ばれるガラスのコリドーがこの建築の全てと言ってもいいくらいにデザインされています。 逆を言えば、清掃工場といえばほとんどが機能的な要求に答えなければ成立しないので それをいかに建築的なコンセプトに導くことが出来るかというところに、苦心している気がします。 竣工時には無かったと思われる、シートが一部の設備に掛けられて見えなくなっているところを見ると そんな軋轢が垣間見えます。 しかし、このコリドーによってこの建築が地域にとってもその活動と共に、価値あるものであることを 印象付けることになっていると思います。 建築が単に機能を満たすだけの箱になってしまえば、機能を満たせなくなった時にその価値もゼロになる。 だから、出来るだけ設備と密接に絡んでしまうより、出来るだけ更新可能な状態でつくった方が価値も高まるのではないでしょうか。 これだけ巨大なボリュームを孕んでしまう施設なのだから、より慎重にデザインされるべきだと思います。 その意味でこういった試みがなされていることが、プラント業界にとっても意味のあることであってほしいです…

HIROSHIMA-4

3つめの”気付き” 「広島西消防署」 設計は山本理顕さん。 この建築は、模型案からかっこ良くてとても憧れました。 これぞ現代建築という雰囲気を醸し出していると思います。 こんなに広島のど真ん中にあるとは思いませんでした。 そう言えば、GAギャラリーに透明なアクリル模型がありましたが あれはピースセンターを意識してたんだろうなといまさらながら思います。 理顕さんのシステム建築に通じる鉄骨の加工は、コラムパイプではなく 溝形鋼を溶接して作成したもの。 なぜかと言えば、エッジにこだわりがあったから。 しびれますね。 ただ、こだわりというのは諸刃の剣でもある。 それが、批判の対象になったりする場合もある。 でも、モノを作っていく上で”こだわり”というアクを抜かれてしまったものほど 虚しく感じるものはないし、こだわりを捨ててしまっては元も子もない。 だからこういう建築を見ると、とても勇気づけれらるんだと思います。 後日談ですが、アポ無しでも内部の見学可能だそうです。 僕はというと・・・知らなかったので、この外観だけで帰りました・・・。 うーん・・・残念。 でも、この気持よさは外から見てもオーラを放っていました。 消防署員には、すこぶる評判悪いみたいですが・・・。 機能と建築は難しいですね。…