外壁メンテナンス

「SI-house」の外壁の撥水性能が衰えてしまって、汚れが付着しているのが目立つようになっていました。
前回は内装の清掃を行ったのですが、今回は外壁の清掃と撥水塗装をお手伝いしました。

近年の打放し補修方法は進化していて、素地のように見えますがほとんどがメンテナンスフリーを装った、塗装です。
例えるなら、ナチュラルメイクをという名のスッピン風メイク。結局、真のスッピンを晒すことはありません。
「打放し」の美しさは、そのコンクリートという素材の型枠転写の技術の結晶によるものだと私は考えます。
つまり、それは人為的なコントロールを超越した自然な風合いによる、一品生産によってのみ創り得るものです。

コンクリートという素材自体は、古代ローマ帝国の時代から存在していますが、現在の手法に近くなったのは、産業革命以後で
打放しの手法が確立してきたのは、ほんの数十年前です。
それでも、初期のポンプ車も撥水剤もない時代の打放しは、表面上の綺麗さとは違う意味での美しさを我々に教えてくれます。
そして、その打放しが風雨に晒され汚れてしまったとしても、美しく感じられるのはなぜか。
それは、建築自体の価値は、表面的な汚れによって奪うことが出来ないものだということの証明でもある。

その意味で、SI-houseが汚れていく様は、私にとっては理想的な汚れ方で、少しも価値に影響しないことを感じていました。
ただ、一方で手を入れることで、美しさを増すことも分かっていたので、撥水剤の耐久性を確認しながらメンテナンスを行うことにしました。

本来であれば、業者を入れて行う事ですが、私の作品として見学することをいつも快く承諾して頂くオーナー様への恩返しのつもりで
ご夫妻にお手を借りながら、材料費のみの負担で出来るよう段取りをしました。

汚れの中心は排気口付近と雨の通り道に集中しているので、そこを中心に清掃しました。
ほとんど補修がかかっていないので、表面を少し削り取るだけで、きれいなコンクリート面が表れます。
ラワン合板の木目があり、あまり削り取ると風合いがなくなるので気を使いながら・・・。

人も建築もメンテナンスフリーというものは存在しないと私は考えます。
人は細胞分裂を行いながら、徐々に年齢という変化をしていきます。建築も風雨にさらされ汚れ、経年変化による変化は避けられません。
しかし、それは単純に劣化として見るのか、歴史として刻むのかで意味は異なります。
人も建築も劣化を嫌う風潮ですが、表面でしか判断できないのは、教養の欠如だと私は思います。
永遠のものは存在しないからこそ、それに愛情を持って守り受け継いでいくことが、美しさの根源だと私は感じます。

法隆寺が建立1000年以上経た今も美しいのは、建立時から丁寧に清掃と修理を欠かさずに人の手に守られたからだと思います。
建築も人の愛情なくしては、存在できないと思います。
どんな形であれ、愛情を持って人を愛せる人ならば、きっと建築も愛せるはず。

いいところに嫁に行ったね・・・。