久々のブログ更新。
Facebookで近況報告をするようになってから、ブログを書く機会が減ってしまいましたが、これはきちんと記録したいと思いました。
まず、日本で唯一のコルビュジェ作品である上野の『西洋美術館』が世界遺産になりました!
このニュースは本当に嬉しいことです。
コルビュジェ財団が世界的に作品全てを世界遺産に認定しようという動きをしているようで、日本でも数年前から検討されていたようです。
関係各所の皆様にとっても、僕のような建築に関わる全ての人にとって、歴史が動いた記念すべき瞬間であると感じます。
ル・コルビュジェという建築家については、様々な研究がなされているのでそちらに論を譲るとして、作品についての解釈について僕の思うところを・・・。
SNSでもいろいろな意見がありますが、「西洋美術館」についての僕の評価は、実はあまり高くありません。
そう思う理由の一つに、コルビュジェの作品はどれも世界遺産として残すべきものですが、唯一日本の「西洋美術館」はそもそもコルビュジェ作品と言えるのか怪しいというものです。
これは主には磯崎さんが語っている説の受け売りなので、詳しくはそちらを見ていただきたいのですが、概略はコルビュジェの基本設計図には寸法が書かれていないこと。
実施設計を日本の弟子たちがモデュロールを駆使してまとめ上げたが、耐震性を確保するために、相当なプロポーションの修正を入れざるをえなかったこと。
そしてメイン空間の吹き抜けに、自分の版画作品を壁面に設置するように再三にわたって日本政府に要求したのだが、とうとう受理されず。
それが原因かは不明だが、本人はこの建築を見ていないこと。
それを根拠にこれはコルビュジェ作品ではなく、コルビュジェの手法を用いた壮大なる建築実験でもあるのではないかという仮説です。
実施設計を担当した3人の日本人の弟子は、間違いなく日本建築界の巨匠であり、素晴らしい建築を生み出しているのですが
ここで作られた建築は明らかに他のコルビュジェ作品とは異質なもので、特別優れているとは言い難い。
僕自身、「ラトゥーレット修道院」と比べると見劣りしてしまうし、迫力が感じられないと思います。
でも、これはある意味とても大事なことですが、近代建築の巨匠の作品でさえも、磯崎さんの言うところの「和洋化」が施され、
別物であるにも拘わらず、日本独自のコルビュジェ解釈建築が生まれたということです。
そして、それが世界遺産という基準をクリアしたということは、「和洋化」そのものも大いに評価されたということでもあります。
そこに日本建築界の底力があると、僕は思います。
現代は本物を模倣することを「パクリ」といって揶揄しますが、もちろんこの建築はそんな類の建築とは一線を画す建築ですし世界的にコルビュジェ作品として認定されているのですが、
本来のオマージュとはこうあるべきということも言えるのではないかと密かに思っています。
そして、優れた設計者が正統な思考でたどった解釈は、その論の根拠に拘わらず賞賛されるべき作品を生み出すことができるという事実。
そこに、僕はとても感動したのです。
何はともあれ、近代建築の世界遺産というのは、スゴイことです・・・。