磯崎新の「都庁」平松剛著。
小説は伊坂作品を除いてあまり読まないのですが、こういう建築が絡んでいたりすると俄然興味をそそられます。
平松氏の前作、「光の教会安藤忠雄の現場」もしっかり読ませて頂きましたので、今回も早速購入。
この作者は、かつて建築設計業界の先端で仕事をしていた異色の経歴の方です。
なので、設計の現場を少しでも知っている人ならば、とても楽しめる内容なのです。
著名な建築家といえど、自分と同じような悩みを持っていたり、苦しみを抱えながら、障害を乗り越えていくというストーリーは
脚色をしなくとも十分に心を打たれます。
磯崎さんの「都庁」計画は、僕の中ではとても衝撃的な事件として、心に残っています。
当時の雰囲気は、丹下さんの出来レースだという意見がほとんどでした。
そして、磯崎さんは基準法違反という理由には反感を覚えた事を記憶しています。
あの案を採用できる審査員は当時の状況ではいないだろうなとも、同時に思いました。
案の優劣が全てではない、コンペの世界は難解です。
どんなに公正に行っていたとしても、「どうせ出来レース」という印象はなくなりません。
もしも、あの磯崎案が採用されていたら、そういう「空気」を打ち破っていたかも知れません。
歴史に刻まれるアンビルド建築は、建築という夢とオーラがあります。
丹下さんはコルビュジェの「ソビエト・パレス」を見ていました。
そして、磯崎さんの「都庁」を見て建築家を志す者がいるかもしれない。
かつての僕がそうであったように。