岸和郎著『逡巡する思考』2007年の初版であるが、今の自分にフィットするその感じが、読んでいて心地がいい。
建築をつくり終え「竣工」を迎える前後の設計者の気分が的確に表現されています。
ここからは上記の著書の引用。
”設計監理者としての自分は建築を実現するために集まってきたチーム、ゼネコンの現場所長から左官の職人見習いに至るまで、小さな住宅でさえ数百人という人達が集まったチームの真ん中に立つ立場にいます。旗振り、といっても良いかもしれません。一つの建築を実現するために、そのチームのことを考え、気遣い続けるのが設計者の仕事だと思っているのですが、「竣工」というみんなの目標が達成され次第、そのチームは解散します。成果に満足している人もいれば、まったく不満足な人もいるでしょう。そんなとき、いつも設計者としての私が感じるのは、反省と不満足でしかありません。チームのすべての構成員に満足して仕事をしてもらいたい、そのうえで結果としての建築が人を感動させるものでありたい、と思っているのですが、その思いが十全に達成されることなどありません。”
まさしく今の自分は反省のオンパレードで満身創痍な感じです。
決してクライアントが求めるものに答えられなかったというようなレベルでの話ではありません。
建築家としての自分のやり方が本当に間違っていないのか、正しい事をしているのか、この「竣工」の時期は特に感じてしまうのです。
その気分を著名な岸先生も感じていると思うとちょっと救われた気になります。
そして、それを癒すのに十分なのはクライアントの喜ぶ姿だけなのも付け加えたいと思います。
まだ引渡しまでは数週間あるのですが、なんとか自分を奮い立たせながらクライアントと共に素晴らしい「竣工」を迎えたいと思います。