横須賀美術館

横浜からちょっと足をのばして横須賀へ
海沿いの峠道を走りながら、鼻歌を歌っていると
突然山側のひらけた空間に気がつくと、山本理顕さんの設計した『横須賀美術館』に驚く。
緩やかな斜面の上に海を見下ろすように建っているそれは、美しいと思った。
『はこだて』の時は街を見下ろすように建っていたが、それを思わせるランドスケープ。
どちらも箱形だがこちらの方が繊細だ。
もっと鉄板に穿たれた「孔」がたくさんあるかと思っていたが、案外少ない。
しかし、それは内部に入った時点で思い違いだった事に気がつく。
孔から海があまり見えないという批判があるそうだが、それは僕には気にならなかった。
むしろ、限定されている孔から海上を走る船が見えたときにはっとする美しさを感じた。
思った以上に多くの船が行き交うので、簡単にその場面に出くわす事ができる。
孔の数を多くすれば、外観上は派手かもしれないが、それはあくまでも「外観上」という話。
孔を内側から眺めたときにどちらがいいかと考えたら、この選択は間違っているとは言えない。

眺望がいい場所に建てる建築はこの部分がとても難しいと思う。
いい眺望をたくさん取り入れたくなるのは誰しもが思う事だが、ではガラス張りで全て見通せる事が出来れば良いのかというとそうでもない。
ゲーリーは建築と彫刻の違いは窓だと言った。窓は建築のアイデンティティという事だ。
窓によって内部が規定され認識される。その窓の概念をこの孔は巧みにズラしている。
それがとても心地よい建築。